TikTokは、10代から20代の若者を中心に爆発的なヒットを誇る、SNSアプリです。
15秒の動画を投稿でき、音楽に合わせた動画を投稿する人が続出しています。
世界中で流行しているアプリであり、なんと150カ国以上の国や地域で使用されています。
しかしこのアプリは本当に安全なのでしょうか?
最近になって「ToTok」というソーシャルアプリが、中東のアラブ首長国連邦の監視ツールとなっていたことが報道されたため、考察してみたいと思います。
アプリ自体が中国の企業によって作られているため心配されている方も多いかもしれませんね。
以前に中国に在住し、アプリの開発にも少し関係したことのある筆者が解説します。
あくまで個人の感覚や感想であることを前提にお読みいただければと思います。
また「TikTok」の使用上の危険とは別問題として考察しています。
TikTokは中国に監視される危険なアプリなの?
まずは「TikTok」を開発した企業について調べてみましょう。
TikTokを開発した会社は「Bytedance」という中国の会社ですが、日本語でも公式HPを見ることができます。
現在は、「TikTok」だけを提供しているだけではなく、プラットフォームの構築を行っています。
「TikTok」自体が始まったのは、2017年7月のことですが、会社自体は2012年3月に創設されています。
つまり中国の企業が「TikTok」を開発しているという事は事実です。
しかし「Bytedance」は中国企業単体というより、海外の会社を吸収しながら大きくなってきたという歴史があります。
「Bytedance」の歴史
例えば、公式HPでは次のような歴史について触れられています。
2016年10月 インドのDailyhuntに出資
2016年12月 インドネシアBABEの過半数の株式を取得
2017年11月 musical.ly買収(アメリカ企業)
少なくとも数カ国の企業を吸収もしくは買収をして大きく成長を続けています。
「ToTok」を提供していた企業の背後には、アブダビのハッキング企業DarkMaterが付いていることがアメリカ政府当局の話として語られています。
「TikTok」が「ToTok」と同じかというと、「TikTok」の運営会社は企業としては正常であり、企業を疑う必要はないでしょう。
「ToTok」の背後にいた「DarkMater」は、FBIにもマークされていたほどの組織になりますので、このような会社と「Bytedance」を比較するのは大きな問題です。
もう一度、強調のために説明すると、「Bytedance」は危険な企業ではないため心配する必要はないでしょう。
では「TikTok」というアプリが完全に安全であるという意味になるでしょうか?
この点については、個人的にすこし疑問が残るところがあります。
中国で使用が許可されているアプリとは?
中国で駐在していた経験のある方なら分かる話だと思います。
海外では利用できるアプリケーションが、中国国内では利用できないという事がよくあります。
以前に中国で生活していた時から、何度も経験しており、非常に面倒に感じていました。
例えば、「Facebook」は中国国内での利用は不可だったため、「VPN」の利用が必須でした。
その他にはソーシャルアプリである「WhatsApp(世界中で10億人が利用)」は、2020年現在も中国国内での利用はできず、「VPN」の利用が必須です。
では、なぜこうした有名なSNSアプリは中国国内で使用できないのでしょうか?
技術的な問題ではなく、国家による判断という事になります。
WhatsAppやFacebookはセキュリティが高く、通話やメール、その他の機能を、他の媒体(例:政府)として収集することができません。
そのようなSNSで情報をやり取りされてしまうなら、国にとっては都合が悪いため、使用について「規制の対象」になっています。
もちろん表向きの理由は異なりますが・・・。
数年前に中国にいた時は、「Skype」をよく利用していましたが、国外のスカイプを利用することが徹底されていました。
中国国内でダウンロードするスカイプは、国際版とは異なっており、私の周りでは通話やメールは安全性が低いという判断が下されていました。
実際、国際版をインストールしてから中国に行くと、中国国内版をダウンロードするようにという表示が繰り返し出てきました。
つまり中国国内版であれば、Skypeであっても電話や会議内容、メールの情報を収集できるようになっていた可能性、あくまで可能性があるという事が共通の認識でした。
つまり中国国内で使用できるSNSアプリは、中国政府からの検閲の要求が出された時には、それを拒否できる力はないという事でしょう。
あくまで噂の域を出ませんが、中国で販売されている「Windows」にも何らかのソフトがインストールされているという話をよく耳にしました。
実際、闇市場のようなところに行くと、最新の「Windows」がたった500円ほどで販売されていました。
中身が改ざんされている可能性は十分あったので、怖くてインストールできませんでした。
中国政府が監視しているとされるキーワード
「TikTok」に関しても、イギリスの「ガーディアン紙」は、アプリによって監視されている可能性について、次のような報道をしていました。
- チベットの独立運動に関係した動画
- 天安門事件
- 法輪功
少なくとも、こうした情報については、「アプリのモデレータ」が監視をしていると報道しています。
これらのワードは、すべて中国政府が検索を禁止しているワードであり、「TikTok」も対象外ではないという意味です。
当然ですが、こうした情報に関するワードを出して動画を投稿すれば、アカウントは停止されます。
2019年には、17歳のアメリカの少女が、メイクの動画を「TikTok」で流し、メイクに関する動画の中で「ウイグル自治区」に関する批判コメントを紛れ込ませたことがありました。
この少女、なかなかやりますよね!
その後、この少女のTikTokアカウントは凍結され利用ができなくなりました。
その後、「TikTok」は、このアカウント削除が技術的な問題であったと謝罪し、アカウントを復活させます。
しかし、ピンポイントで「ウイグル自治区」について批判した「メイク動画」を削除したことは、モデレータによる監視が行われている証拠と言えるでしょう。
しかし「TikTok」は謝罪し、アカウントを復活させました。その理由は、少女が利用していた「TikTok」が国際版だったからと見られています。
先ほどのSkypeと同じように、「TikTok」にも「中国国内版(抖音短视频)」と「国際版(TikTok)」の2種類があるというわけです。
中国に行く可能性のある方は、中国で「TikTok」をダウンロードしないように注意してください。
先ほどのアメリカ人の少女が利用していた「TikTok」が中国版「抖音短视频」であったなら、謝罪もアカウント復活もなかったはずです。
それでも「TikTok」に関して、アメリカの少女が投稿した動画から判断すると、中国国内版も国際版も同じようにアプリのモデレータによる監視がされているという可能性は否定できません。
アラブ首長国連邦の「ToTok」アプリとは比較対象にはならないものの、やはり監視されてい事実は、あまりすっきりするものではありません。
ガーディアン紙もあくまで「モデレートによる監視」としているので、アプリがどれほどの情報にアクセスしているのか、どれほど情報を収集しているのか分かりません。
中国版SNS「微信」「WeChat」は危険なの?
しかし中国国内でよく利用されている「微信」というSNSアプリ、国際版は「We Chat」と言いますが、メールや通話は監視対象になっているとされています。
あくまで個人的な情報ルートになりますが、ある友人のスマホの「WeChat」でやり取りしていた写真やメール内容がすべて警察に筒抜けになっていたという出来事がありました。
そう言える理由は、ある時、彼は友人たちと海にいき、そこで時間を過ごしたようです。
その時の計画、一緒に行った友人たち、そのすべてを「We Chat」で友人と情報交換していました。
その友人の仕事柄、あまり政府が良く思っていなかったようで、ある時警察から事情徴収を受けました。
その時に言われた内容は、すべて「We Chat」の中で情報交換した内容、そして写真でした。
つまり実体験として、情報がすべて筒抜けになっていたこと知ったわけです。
これもやはり中国におけるSNSの事実です。どう思われるでしょうか?
TikTokは中国に監視される危険なアプリなの?のまとめ
ここまで説明してきたことは、あくまで個人的な経験と新聞による報道をまとめてきたものです。
ガーディアン紙の「監視」についての情報は、興味深い報道であり、決して見過ごすことはできないものです。
そして個人的に中国で生活をしてきた時に感じていたSNSに関する違和感は、決して勘違いではないと思っています。
実際、国内版アプリと国際版アプリが存在していることも、情報監視の1つの証拠とも言えるかもしれません。
もしアプリの利用が必要なのであれば、できるだけ「国際版TikTok」を利用する方が賢明でしょう。
私の周囲でも、「TikTok」を利用している人はたくさんいますが、個人的にはあまり利用する気にはならないので、使用は引き続き控えたいと思っています。